うっかり手を滑らせ

手鏡を床に落としてしまった

ガッシャーン！

絵に書いたようにバラバラ

しかも息子の祭壇の横で

あーあ

ついにやったか

一つ一つカケラを拾いながら

息子の心も

こうなっちゃったのかな

やっぱり何かきっかけがあったのかな

ヒビ割れていたところに

最後の一発がきたのかな

この鏡のように

細かく砕けたのだろうか

そうなったら

誰にも戻せまい......

そうなる前に

気付いてあげるべきだった

また

涙が溢れて

胸が苦しくなる

未だに納骨していなくて

墓石のデザインが決まり

あとは色と細かい打ち合わせが終わったら

二週間くらいで出来上がるという

そうしたら

一周忌と一緒に納骨しようと

でも

息子は一人でそこに入るの

今は皆が集まるリビングにいるのに

離れてしまう事を考えると

今から寂しくて

でも

そうしないと

私も息子も皆も

落ち着けないんだろうなと思いつつ

納骨式はまた

泣きじゃくってしまいそうだ

同じ墓地には

同じように息子さんを若くして亡くした方のお墓がある

８年納骨出来なかったそうだ

わかるなぁ

でもこのままじゃいけないとも思うし

でもまだ

決心がつかない

どうしよう

夏になった

私なりに精一杯やっても仕事が遅い

毎日4時30分起き

迷惑がられながらも

他の人より早く行き

準備を始めるがそれでも遅い

毎日汗だくだ

昼食もトイレもどんなに短縮しても

私は仕事が遅い

もう2ヶ月経った

この間

初めて定例会議に出席した

気付いたことの意見を述べるようにと言われた

私は特になかった

まだ入ったばかりで

こなすのにいっぱいいっぱいだからだ

何となく仕事をせずプロ意識を持ってやるように。

はい

わかります

息子にも言ってきた

どんな仕事でも

その道のプロになれと....

厳しい事ばっかり言ってきたな

男だからって

初めて社会に出て

要領も掴めず

キチンとやりたい性格だった息子

側に居てあげれば良かった

地元で就職させれば良かった

身の回りの事をやってあげれば良かった

毎日朝早くから遅くまで働いて

明日までにやらなければいけないことが

たくさんあって

でも

洗濯しなくちゃいけないし

買い物してご飯炊いて

風呂洗って

一人暮らしだから....

真面目な息子は

120％の働きをしたくて

毎日バタンキューしたいのに

私は

息子が大学卒業して就職して

やっと手が離れた

これからは第二の人生なんて

自分のことばかり考えていて

今日も一日をこなした

息子がいなくなってから

また一日増えた

疲れて帰ってきて

夕飯作る時　誰かいて

たわいもない話をして笑ったり

何も言わないけど癒してくれるワンコもいて

窓からは心地好い風が吹いて

氷で冷やした炭酸は美味しくて....

ここに

この場に

息子がいたらって....

きっと

仕事で何かあっても

きっと

生きていてくれたんだろうなって....

どうして

もっと息子をわかってあげなかったんだろう

どうして

もっと息子の側にいてあげなかったんだろう

後悔で

胸が苦しい